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幻の(?)黒パン Pane Nero di Castelvetrano

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「Castelvetrano(カステルヴェトラーノ)に幻の黒パン(= Pane Nero)が存在する、、、、」

と聞いたのは、5年前にトラーパニに来てから間もなくの事でした。「幻」とは実に魅惑的な言葉で、「幻」と言われると何が何でも見てみたくなる私。好奇心旺盛な私はこの「幻の黒パン」の存在を確かめるべく、数日後にすぐにカステルベトラーノに行った事を今でも覚えています。

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カステルヴェトラーノまではトラーパニから電車で約1時間10分程度で行くことができます。(午前中に3~4便あり)バス停から街中までは徒歩約10分、坂道を上っていきます。歩いている途中にも、あちらこちらに「Pane Nero」の看板。

(左上)カステルヴェトラーノの駅。昔の田舎の駅を彷彿させる小さな駅です。

(右上、左下)パン屋さんの看板には必ず「Pane Nero」と書いてあります。Pane Neroは今となってはカステルヴェトラーノを語るのに欠かせない存在なのでしょうね。

(右下)Pane Neroは丸型が基本。写真は500g(Mezzo kiro)。中身はムチムチとしていてとっても締まっているため、見た目よりもずっしりと重いのが特徴。



カステルベトラーノはトラーパニ県の南東部にある小さな街。質の高いオリーブオイルが作られる事で知られています。そして、この辺一帯では昔から伝わる「tumminia(トゥンミニア)」と呼ばれるこの地域でのみで古くから栽培される硬質小麦があり、この小麦を使ったパンが幻の黒パン、となるわけです。黒パン作りは、「tumminia(トゥンミニア)」と「硬質小麦の全粒粉の2度挽き」を使います。黒いのは全粒粉を使っているから?

「いや、tumminiaの粉は灰色っぽいんですよ。黒くなるのは全粒粉を使っているからだけじゃなくて、tumminiaの色がもたらすものでもあるんですよ。」

と語るのは、カステルヴェトラーノの老舗のパン屋さん、La Bottega del Pane Rizzoのシニョーラ。

さてこの黒パン、お味は、、、と言うと、普通のパンなのにほんのりと甘くとても香ばしい。シニョーラが言うには、これまたtumminiaの粉がもたらす味だとの事。でもtumminiaはこの地域でしか栽培されていないため、なかなか手に入りづらい食材の一つだそうです。

さて、ここで「本物の黒パン」である条件とは?


① 石臼で挽かれたtumminiaの粉を使っていること。
② リエビト(酵母)はナチュラルなものであり、人工的なものは使わないこと。
③ 薪窯を使っていること。
④ 薪はオリーブオイルの木の枝であること。


ただのパンでありながらこんなに条件が!

リエビトは「水と粉」から長時間かけて醗酵させて作った生地がベースとなっています。ビール酵母や生イーストのような人口的に作られたものは一切使わないそうです。毎日、黒パンの生地を少し残し、翌日のパンの生地に加えます。("Lu Criscenti"、と地元の人は呼びます)そのため醗酵時間がとても長いので、朝早くからの仕込みが必要となります。

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5年前に初めてカステルヴェトラーノを訪れた時、偶然、tumminiaの粉を挽いているという人と出会い、ラッキーにも粉挽き工場を見学させてもらうことができました。

(左上)これがウサワのtumminia。外皮は美しい金色をしていて粒も揃っていてキラキラと光っているように見えました。

(右上)粉挽き機。現在は近代的な機械で粉を挽く工場が多い中、こんな古い機械もがんばっています。お父さんの台から受け継いだ粉挽き機だそうです。

(左下)粉挽き機内部。大きな丸い石がグルグルと周って粉が挽かれていきます。

(右下)tumminiaの粉。これだけ見ると黄色っぽく見えるけれど(硬質小麦の粉は黄色っぽいのです)、普通の硬質小麦の粉と比べると明らかに灰色っぽいのがわかります。



長い時間をかけて醗酵させた生地は、オリーブの木がくべられた薪窯で焼き上げられます。窯が300度と高温に達した時点で火は消され、一度内部をきれいに掃除します。そしてそこに醗酵したパン生地を入れてゆっくりとゆっくりと直火があたることなく余熱で火を入れていきます。そして、オーブンが完全に冷めたらパンの焼き上がり。醗酵から焼成まで本当に手のかかっている一品です。

さて、5年の月日を経て先日久しぶりにカステルヴェトラーノに「幻の黒パン」を求めて行って来ました。5年前に行ったLa Bottega del Pane Rizzoは現在も変わることなく存在していました。

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(左上)Bottega del Pane Rizzoはこんな小さなお店。カステルヴェトラーノでは知らない人はいないほど老舗のお店です。

(右上)イタリアスローフード協会の「Presidio(プレシディオ=絶滅の危機に瀕してる伝統食を守ろう、というスローフードの活動)」にも登録されています。
”Pane Nero di Castelvetrano Presidio Slow Food con Lievito Naturale "Lu Criscenti"”

(左下)黒パンでパニーニを作ってもらいお店の中でシニョーラとおしゃべりをしながらムシャムシャ。ものすごい存在感のあるパンに、サラミもチーズもすっかり負けていました(笑)ほんのり甘くムチムチとした食感は日本の”黒蒸しパン”に近いものがあります。

(右下)カステルヴェトラーノの黒パンは、カステルヴェトラーノで作られるチーズ、サラミ、大粒のオリーブととても相性良し。これだけで十分に食事になります。



「カステルヴェトラーノにもたくさんの”Pane Nero”を売っているパン屋さんがあるけれど、本物を作っているパン屋さんはもう少ないのよね、、、」

と、嘆くBottega del Pane Rizzoのシニョーラ。現在料であるTumminiaが手に入りづらい事、天然のリエビトを使うため長時間の醗酵時間が余儀なくされること(当然労働時間も増えます)、薪窯を持っている人が減ってきたこと、、、原因は色々。消え行く伝統、、、を守るべく、街の人には本物を作り続けていって欲しい、と強く願うのでした。

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by lacucinasiciliana | 2010-04-19 05:38 | シチリアのオイシイモノ色々
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