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夏の風物詩 1年分のトマトソース作り始まる

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7月末、この時期のシチリアの畑はどんどん枯れてくる。シチリアのギラギラとした強烈な太陽を浴び植物達も「こりゃたまらん」と。そんな中、元気なのがトマト、ナス、ピーマンなどの夏野菜。さすが「夏野菜」というだけあって暑さにも強い。その中でもトマトは1本の木にたわわに実を付け、暑さで葉は枯れてくるのに実はどんどん熟してくるという、水不足のシチリアにとってはなんとも心強い野菜なのだ。そして少ない水分で、トマト自らの力で頑張って育った完熟トマトは驚くほどに美味しい。

私がいつもお世話になるドミンゴ家では、パパが大切に愛情を込めて育てたトマトを使って1年分のトマトソース作りをする。その数、数百本。シチリアでは今でもソース作りをする家が多いものの、この規模は私が知っている中では最大級だ。

トマトソースとはいうものの塩も、ハーブも何も入っていない。言ってみれば「絞りたてトマトジュース」みたいなもの。イタリアでは「パッサータ」と呼ばれ、日本でもデパートの地下や高級食材店で販売されている。だが「自家製パッサータ」は全くの別物。甘みが強く、でも適度な酸味もある。これさえあればどんな料理も美味しくなる魔法のソースなのだ。

作り方は至ってシンプル。皮と種を分けやすくするために大きな鍋でトマトを軽く煮る。それを、皮と種とジュースに分けるための機械(機械とは言えこれまたお手製、35年前の代物)にかける。それを瓶に詰めて、ふたをし、湯煎でお湯が沸騰してから2時間煮て、翌朝まで冷ます。これだけ聞くと簡単そうに思えるけれど、これが1日がかりの仕事なのだ。何故なら1回に大量のトマトをソースにするからだ。

上の写真、これはドラム缶で湯煎にしているところ。この中にはびっしりの瓶と緩衝材のための藁が入っている。その数約200本!トマトを軽く煮るのも巨大な鍋でドラム缶と同じ場所で火を起こして煮る。この日、100キロ以上のトマトをソースにしたというのだ。

「今年はこれで2回目。あと3回ほどやらなきゃね~。」

マンマとパパは前日から機械のチェックをしたり、使うための道具を洗ったり準備を始める。そして1日がかりのトマトソース。トマトは一気に熟すわけではないので、夏の間に大体5回ほど行われるこのトマトソース作り。そして、夏の間に大量にできるトマトソースはマンマとパパはもちろん、息子、娘の家族、そして親戚達が1年中使う。寒い冬も美味しいトマトの恩恵を預かることが出来るというこのソース作りはドミンゴ家には欠かせない夏の行事だ。

私が日本からシチリアに戻った翌日に必ず食べたくなるもの、パパとマンマのトマトソースだけで作ったシンプルなパスタ。私にとって「シチリア版おふくろの味」。それは、このトマトソースの中には彼らの愛情がたっぷり詰まっているからなのかもしれない。
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by lacucinasiciliana | 2012-07-28 16:51 | 保存食を作る
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