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マルサラ地方に伝わるワインの伝統 「農民ワイン ペルペトゥオ」

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マルサラ地方にはかつて「ペルペトゥオ」と呼ばれるワインの製法があった。

「ペルペトゥオ」とはラテン語で「永遠」という意味。樽に入れられたワインは少しずつ蒸発し、少しずつ飲まれる。そして、その空いた部分は、毎年新しいワインで満たしていく。こうして毎年継ぎ足していく事で

「永遠に終わらないワイン」

という事からペルペトゥオという名が付いた。

農家はかつてこうして家でワインを造り続けてきたのだが、大手のワイナリーが活躍するようになり、かつてのワイン世界とは全く違う形態となった現在のシチリアワイン事情。ブドウを売っても全く利益が出なくなってしまった今日この頃、ブドウ農家を廃業する農家もたくさんでてきて、農家のワインの伝統は途絶えつつあるのだ。

しかしそんな伝統を守ろうとする人物もいる。トラーパニ近郊で活躍するワイン醸造家ジャコモ・アンサルディ氏。彼は、マルサラで生まれ育ち、ワインの勉強を続けてきた。現在は某大手ワイナリーの醸造家をつとめる他、自身のこだわりのブドウ畑とワイナリーも所有する。そのワイナリーの地下にはペルペトゥムのコレクションがあるのだ。古いものでは1950年代から続いているワインもあるとの事。

「このコレクションはね、農家にお願いして買ったものもあるけれど、きちんとこのワインの伝統を継いでくれるなら、、、という事で農家から引き受けたものもあるんだよ。”息子はもう農業を継がないから誰かがワインを管理してくれないと我が家の伝統が途絶える”、ってね。悲しいけれどそれが現実。でも、僕はこのマルサラの伝統をしっかり守っていきたいと思っているんだ。」

ペルペトゥオを保存するため、厚さもしっかり備えた樽を作ったアンサルディ氏。

「この樽なら今から100年以上はしっかり保存できるだろうからね。息子の代まで続くだろう?」

両サイドには合計30個以上の樽が並ぶ。こんなにペルペトゥオ一同に見れるのはこのカンティーナだけであろう。一つ一つが違う農家から引き継いだものだ。一つ一つの樽に家族の伝統があり、彼らのためにもそれをしっかりと引き継いでいく必要があるのだ、とアンサルディ氏は語る。

私はこの貴重なペルペトゥオを時折試飲する機会に恵まれる。

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琥珀色をした数十年続いているこのワイン、香りを嗅ぐとなんともいえない芳醇な香りで満たされる。口に含むと、非常にさらっとしているのに飲み干した後も香りはずっと続く、、、なんとも言えず後を引くワインだ。アルコール度数は18~19%と非常に高い。アルコールは加えられていないのに、こまで度数が上がるのは、この地区で作られるブドウだから。色々な年代のものを飲ませてもらったが、やはり醗酵具合が樽に寄って異なる事はすぐに分かる。一番古いもので約70年ほど前のもの。それは、一言では、いや言葉では表現できないような始めて味わったものであった。

かつては結婚式や出産祝いなどのお祝い事に振舞われていたというペルペトゥオ。家族の歴史を見守ってきたといっても過言ではないであろう。時代の流れとともに伝統が失われていく事は悲しいことだが、その反面、それを守ろうとする人がいるという事は喜ばしき事。このペルペトゥオコレクションは代々継がれて行く事を心から祈る。
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by lacucinasiciliana | 2012-10-26 19:46 | シチリアワイン
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