2012年 05月 15日 ( 1 )

伝説のカラメッラ(飴)おじさん、逝く

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トラーパニに伝わる密かな伝統の「手作りカラメッラ(飴)」。

砂糖と水を溶かして香りを加えて練る、それを伸ばして冷まし切る。手作り、そして純粋な材料で作られた「トラーパニのカラメッラ」はどこか懐かしく、そして純粋に美味しい、と感じさせてくれるカラメッラ(飴)だ。

かつてトラーパニのチェントロに小さな飴屋さんを構えていたおじさんがいた。その名も「Sig. Caramellaio(飴おじさん)」。名前は知らなくとも「Sig. Caramellaioのお店の近く」と言えば、トラーパニ市民の誰もが分かる、、、というほど有名な名物おじさんだ。

私がトラーパニに来て間もない頃、この手作り飴に興味を持ち、

「おじさん、仕事を見ていてもいい?」

と聞いてみたところ。

「あぁ。」

と、一言無愛想な返事。

飴作りは小さな一口ガスコンロと年季の入った鍋、飴をかき混ぜるヘラ、そして飴を切り分けるための大きな大理石、それだけの道具で作られていた。ただの砂糖が数分後にはキラキラと輝く飴に変わっていくのが面白く、私は時間が空くと飴の作り方を見におじさんのお店の軒先で飴作りを見に行った。

お店は広いがその片隅だけで作業をするおじさん。

「ここは前はお菓子も作っていたんだよ。でも継ぎ手がいなくてね。僕だけになっちゃったから今は飴だけしか作れないんだよ。」

そう寂しそうに語るおじいちゃん。最初は無愛想だったものの、何度も何度も通ううちに段々身の上話をするようになり、最後はすっかり友達の様に仲良くなった。そんな飴おじさんも数年前にお店を引退。週に1回だけ、メルカートで飴を売っていた。仕事は引退しても飴作りは辞められなかったのだろう。私も時折、飴おじさんの元に訪れ懐かしの味を楽しんでいた。

今朝、新聞を読んでいると

「伝説のSig.Caramellaio 逝く」

という文字が目に飛び込んできた。

飴おじさんがいたお店は現在、違うお店に変わってしまった。そして現在、飴を作る人はもういない。トラーパニから伝統がひとつ消え去っていった気がした。そして、一番最初に出会った無愛想な時とは正反対の、引退後の彼の優しい笑顔を思い出した。

Sig.Caramellaioのご冥福を心より祈る。
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by lacucinasiciliana | 2012-05-15 20:32 | シチリア菓子・パン