
マルサラに変わり者のワイン醸造家がいる。
「ZibibboとGrilloはね、親戚に当たるんだよ。昔はこうして一緒の畑に植えられて育てられていたんだし、それが伝統的な植え方だったんだよね。だったら今、一緒に植えたっていいんじゃない?と思ってさ。」
そう語るのはジャコモ・アンサルディ。トラーパニの某有名ワインカンティーナのエノロゴ(醸造家)も勤める敏腕エノロゴだ。
「赤もね、Nero D'AvolaとPerticoneは親戚なんだよ。Perticoneは、生産性が良くないことからシチリアワイン界から消えつつある品種なんだけれど、僕はこの力強い大地の味が好き。だから、自分の畑では絶対に試してみたいと思っていたんだよね。」
もはや、世に名前が知れたワイナリーではエノロゴ(醸造家)を雇っているのが常。人気エノロゴなんて人もイタリアにはたくさんいて、有名ワイナリーのエノロゴを数軒兼任している、と言うツワモノも少なくない。ただし、会社組織である以上、「自分の好きなもの、好きな味」を追求することはできない。会社としての方針に沿って美味しいワインを造るのがエノロゴの仕事だ。
アンサルディ氏は長くパレルモ大学と共同研究を進めているアンサルディ氏は、「どうしても自分の考えるワインのつくり方を研究してみたかった」。それが、
「混植混醸」
数種のブドウを一緒の畑に植えて、モスト(ワインの原料となるぶどうジュース)を絞るのも一緒。
「ブドウの品種それぞれに適した育て方があり、適した醸造の仕方があります。なので、それぞれのブドウに合った土地を選んで植えて、それぞれのブドウに合った醸造方法でワインを作って、それをブレンドします。」
と、どこのカンティーナに行っても聞くお決まりの説明に一石を投じたアンサルディ氏。(注・もちろんお決まりの説明も正しいです。)
「みんなが同じ事していちゃつまんないでしょ」
アンサルディ氏が作るワインは白が1種、赤が1種、そしてデザートワインが1種。合計3種のみ。どのワインも非常に丁寧な作り方をされたことが伝わってくる。
「売れる本数?そんな事は気にしないよ。僕は自分が納得できるワインが作れれば、それで満足なんだ。でも僕が付けた価格からは絶対に割り引かない。それは僕の仕事に対する評価でもあると思っているから。だからインポーターも寄ってこないんだけどね。」
と笑うアンサルディ氏。
アンサルディ氏の奥さんパオラさんは
「彼はpazzo(キチガイ)よ。美味しいワインを造ることしか頭にないの。」
確かに。アンサルディ氏には頻繁に会う私だが、ワインの話を始めると、終わることを知らない。
かつてマルサラにはMarco De Bartoriという「マルサラワインの反逆児」と呼ばれていた変わり者がいた。彼独自の理論で作り上げたワインには傑作も多く、多くのワイン愛好家に愛されていた。が、2011年春、66歳でまだまだ早かった人生の終焉を迎えた。反逆児も世代交代、、、というところだろうか。




