<   2012年 07月 ( 3 )   > この月の画像一覧

夏の風物詩 1年分のトマトソース作り始まる

f0226106_16453081.jpg


7月末、この時期のシチリアの畑はどんどん枯れてくる。シチリアのギラギラとした強烈な太陽を浴び植物達も「こりゃたまらん」と。そんな中、元気なのがトマト、ナス、ピーマンなどの夏野菜。さすが「夏野菜」というだけあって暑さにも強い。その中でもトマトは1本の木にたわわに実を付け、暑さで葉は枯れてくるのに実はどんどん熟してくるという、水不足のシチリアにとってはなんとも心強い野菜なのだ。そして少ない水分で、トマト自らの力で頑張って育った完熟トマトは驚くほどに美味しい。

私がいつもお世話になるドミンゴ家では、パパが大切に愛情を込めて育てたトマトを使って1年分のトマトソース作りをする。その数、数百本。シチリアでは今でもソース作りをする家が多いものの、この規模は私が知っている中では最大級だ。

トマトソースとはいうものの塩も、ハーブも何も入っていない。言ってみれば「絞りたてトマトジュース」みたいなもの。イタリアでは「パッサータ」と呼ばれ、日本でもデパートの地下や高級食材店で販売されている。だが「自家製パッサータ」は全くの別物。甘みが強く、でも適度な酸味もある。これさえあればどんな料理も美味しくなる魔法のソースなのだ。

作り方は至ってシンプル。皮と種を分けやすくするために大きな鍋でトマトを軽く煮る。それを、皮と種とジュースに分けるための機械(機械とは言えこれまたお手製、35年前の代物)にかける。それを瓶に詰めて、ふたをし、湯煎でお湯が沸騰してから2時間煮て、翌朝まで冷ます。これだけ聞くと簡単そうに思えるけれど、これが1日がかりの仕事なのだ。何故なら1回に大量のトマトをソースにするからだ。

上の写真、これはドラム缶で湯煎にしているところ。この中にはびっしりの瓶と緩衝材のための藁が入っている。その数約200本!トマトを軽く煮るのも巨大な鍋でドラム缶と同じ場所で火を起こして煮る。この日、100キロ以上のトマトをソースにしたというのだ。

「今年はこれで2回目。あと3回ほどやらなきゃね~。」

マンマとパパは前日から機械のチェックをしたり、使うための道具を洗ったり準備を始める。そして1日がかりのトマトソース。トマトは一気に熟すわけではないので、夏の間に大体5回ほど行われるこのトマトソース作り。そして、夏の間に大量にできるトマトソースはマンマとパパはもちろん、息子、娘の家族、そして親戚達が1年中使う。寒い冬も美味しいトマトの恩恵を預かることが出来るというこのソース作りはドミンゴ家には欠かせない夏の行事だ。

私が日本からシチリアに戻った翌日に必ず食べたくなるもの、パパとマンマのトマトソースだけで作ったシンプルなパスタ。私にとって「シチリア版おふくろの味」。それは、このトマトソースの中には彼らの愛情がたっぷり詰まっているからなのかもしれない。
[PR]
by lacucinasiciliana | 2012-07-28 16:51 | 保存食を作る

島民が作る島民のためのパッシート ~食文化は気候風土から形成される~

f0226106_17554221.jpg


パンテッレリア島と言えば「Passito di Pantelleria(パッシート ディ パンテッレリア)」、と言われるくらい有名なこのワイン。通常は「パッシート」と呼ばれる。

パッシートはZibibbo(ズィビッボ)種という甘い甘いマスカットから絞ったモストに、同じ品種のブドウから作った干しブドウを加えながら醗酵させていく独自の作り方をするデザートワインだ。ここトラーパニでもパンテッレリア島が近いとあって頻繁に飲まれるデザートワイン。だが、パンテッレリア島は頻繁、、、というより毎日、いや、毎食後に飲まれるほど親しまれているワインだった。

食事の後、ふっと立ち寄ったバールで、知り合いに家で、、、、いつどこでも

「パッシート飲む?」

パンテッレリア島は風が強い事でも知られる島。そのためここでは高い木は育てられない。(というか、育たない)当然ブドウの木も膝の高さほどの低木なので収穫は膝を付き腰をかがめながらの重労働だ。その上、干しブドウも一つ一つ手作業で枝から離すとあってその作業は気が遠くなるほど。そんな大変な思いをして作ったパッシートはもちろんパンテッレリア島民にとっても大切なもの。パッシートをご馳走してくれる、という事は歓迎されているのだろう、と思って間違いない。

6月に行ったパンテッレリア島。一体5日の滞在中にどれだけの種類、そしてどれだけの量のパッシートを飲んだ事であろうか、、、、。そして、島民からご馳走されたパッシートは私が今まで知っていた非常に香り高く色も濃い、トリロ、、、としたパッシートとは違うものであった。サラサラ、色も琥珀色、そしてスッキリとしたパッシート。こんなパッシートもあるの?

それもそのはず。私が島民からご馳走してもらったパッシートは、それぞれのお家自慢のパッシート。ラベルを貼られて世に出るものではないこの島に来て、そしてこの島の人々と知り合わなければ飲むことができない貴重なパッシートだったのだ。

「あいつんちの今年のパッシートはこの島一番さ。」

と、島民同士でも、毎年パッシートの品評会となるという。

そんな島民のパッシート、これがまたどれもこれも非常に美味なのだ。パンテッレリアはアフリカに近いため灼熱の強烈な太陽が毎日降り注ぐ。島民たちは少し歩いてはバールで休みながらお喋りに興じる。そんな時のお供はパッシート。夜になると手にはそれぞれ、家で採れた野菜や果物、釣ってきた魚を持ち寄り、適当に誰かが作り始め、適当にウワサを聞きつけた人が集まり始める。そして食事の後のお供はもちろんパッシート。気温がグンと下がる過ごしやすいパンテッレリアの夜はこうして更けて行く。1日に何度も何度も飲まれるパッシート。それには私が知っているトロリ、、、としたパッシートは重過ぎる。灼熱の太陽を浴びた後、バールでご馳走になるパッシートは、少しサラサラしたくらい(とは言ってももちろん普通のワインよりはかなりしっかりしているしアルコール度数も高い)の方がぴったりだ。

「食文化とはその土地の気候風土と相まって形成される」

本当にその通りだ、と体感した今回のパンテッレリア島訪問。忘れ難い非常に貴重な体験であった。

私が知っていたトロリ、、、としたパッシート、それはもちろん甘美な、魅惑な香りの、とても美味な、そして超高級なパッシートだ。しかしそれは、その土地で飲むものとして生まれたのではなく、そもそもパッシートが飲まれない土地(これほど暑くない、これほど頻繁に飲まれない)をターゲットとして生まれたものだという事に気がついた。云わば「島の外に輸出するためのパッシート」。島で飲むには重過ぎる。

5日間の間に本当にたくさんの島民パッシートをご馳走になった。どれもこれもそれぞれに味わいがありあまりにも美味しく、写真を撮るのも忘れてしまった。その中でも一等賞は、港の近くにある場末のバールでご馳走になった一杯。サラサラとした琥珀色の液体は、太陽に疲れた私の体を自然の甘みで潤してくれた。
[PR]
by lacucinasiciliana | 2012-07-15 17:51 | シチリアワイン

ケッパーの収穫真っ最中!

f0226106_15491598.jpg


トラーパニの南に浮かぶ小さな島パンテッレリア島に行ってきた。

トラーパニから約120キロ、アフリカから60キロ、この島はイタリアというよりほぼアフリカに近い場所に位置する。6月下旬だというのにギラギラとした太陽は肌に当たると強烈に痛いほどだ。そしてこの島の6月の風物詩と言えば「ケッパー収穫」。火山が噴火してできたこの島は島全体の土地が非常に肥沃だが降水量が極端に少ないため土地は乾いている。しかしこんな環境がケッパー栽培に適しているというのだ。

ケッパーとは、フウチョウボク属にぞくする低木の木の蕾を収穫して、塩漬けにしたもの。パンテッレリア島で収穫されるケッパーは世界でも最高品質と言われている。

私達はサルバトーレ、通称トト、という生産者を訪ねた。

「収穫したい?いやいや、見ているだけの方がいいんじゃない?疲れるよ。」

収穫を手伝いたいという私たちへのトトはこういう。

ケッパーの収穫は朝5時から始まり12時近くまで続く。ケッパーの木は低木のため、収穫するには膝をつき腰を曲げ、手で小さな蕾を一つずつ収穫していく。非常に忍耐力が高い仕事だ。トトはこの道50年以上というベテランのケッパー農家。右手、左手、それぞれにケッパーを収穫してくその手は、まるで機械のよう。両手を使って収穫する慣れない私達の倍以上のスピードで収穫していく。見事な手さばきだ。

私たちも黙々と収穫すること約1時間。強烈な陽射しの下で腰をかがめながらの収穫は、想像以上に大変なものだった。農業は憧れだけでは勤まらない仕事なのだ、、、と改めて感じるのであった。

ケッパーの収穫は7月下旬まであと1ヶ月ほど続く。
[PR]
by lacucinasiciliana | 2012-07-03 16:00 | シチリア・旬の食材