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死者の日のお菓子「Frutta Martorana(フルッタ マルトラーナ)」

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11月2日はイタリアではFesta dei Morti、直訳すると「死者の日」。なんだかオドロオドロシイ名前であるが、日本的に言えば「お盆」のようなもの。亡くなった人々の事を思い出し、墓参りに行く日である。

イタリア全土で死者の日のお菓子が色々とある。今では「シチリア名物菓子」とも言われるようになった「Frutta Martorana(フルッタ マルトラーナ)」は本来、シチリアでは死者の日のお菓子だったのだ。

Frutta Martorana(フルッタ マルトラーナ)は元々はパレルモにあるマルトラーナ修道院のスペシャリティー。今ではシチリア全土に普及したが、「マルトラーナ(修道院)のフルーツ」と呼ばれるのはそのためだ。日本では「落雁」をお供え物として仏壇やお墓に飾るが、なんだかその習慣に似ている。シチリアでは死者の日にこのお菓子を飾るのではなく食後に食べる。このお菓子、一体食べれるのかどうか、、、という質問をよく受けるが、「食べれる」ではなく「食べるため」のお菓子である。

この時期、トラーパニのパスティッチェリアにはフルッタマルトラーナが所狭しと並ぶが、私は毎年知人が手作りしたものを頂く。家庭で作ったフルッタマルトラーナは、どこかほっこりした味がして美味しいのだ。今年はフルーツに加えてエビが入っていたのもちょっとした遊び心。そう、フルッタマルトラーナはフルーツだけに限らず、魚でもエビでも想像力に任せて作れるところが楽しいのだ。

来年は何が入っているのか、、、1年後を楽しみにしよう。
# by lacucinasiciliana | 2012-11-02 23:41 | シチリア菓子・パン

秋は野草狩りに行こう!

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やっと気温が下がってきたトラーパニ。雨が降り始め、そして気温が下がったとは言え日中には太陽がサンサンと照るこの季節、田舎には「食べれる野草」がグングンと背を伸ばしてくる。

今の時期、収穫できるのは「ジーラ」という小松菜のようなものと、「クワレッドゥ」と言われるかなり苦味の強いもの、いずれも野生種のもの。たっぷりの湯で茹でてレモンをギュっと絞って食べるととっても美味。

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私が師と仰ぐドミンゴパパはいつもポケットに小さなナイフを携帯している。数十年も使い込んでいる年季の入ったナイフだ。パパはこの小さなナイフで機用に根っこから引き抜き、泥が付いた部分を掃除していく。そのスピードはとても80歳を過ぎたお年寄りとは思えず。私も頑張ってみるがそのスピードには全く叶わない。

田舎は普段生活する海の香りがするトラーパニとは違い、土と緑の香りがする。そんな中での野草狩りはいつもと違う風景、そして香りにちょっとワクワクする。皆で競争するかのように野草狩りに夢中になった。

この日は天気がぐずつき、途中から大粒の雨が降ってきたため中断したが、1週間あっても食べきれないくらいの野草を収穫してきた。さて、今週はこれをどうやって食べ続けるか、、、ありがたくも悩ましい問題だ。
# by lacucinasiciliana | 2012-10-29 16:48 | シチリアの畑から

マルサラ地方に伝わるワインの伝統 「農民ワイン ペルペトゥオ」

マルサラ地方に伝わるワインの伝統 「農民ワイン ペルペトゥオ」_f0226106_19292038.jpg


マルサラ地方にはかつて「ペルペトゥオ」と呼ばれるワインの製法があった。

「ペルペトゥオ」とはラテン語で「永遠」という意味。樽に入れられたワインは少しずつ蒸発し、少しずつ飲まれる。そして、その空いた部分は、毎年新しいワインで満たしていく。こうして毎年継ぎ足していく事で

「永遠に終わらないワイン」

という事からペルペトゥオという名が付いた。

農家はかつてこうして家でワインを造り続けてきたのだが、大手のワイナリーが活躍するようになり、かつてのワイン世界とは全く違う形態となった現在のシチリアワイン事情。ブドウを売っても全く利益が出なくなってしまった今日この頃、ブドウ農家を廃業する農家もたくさんでてきて、農家のワインの伝統は途絶えつつあるのだ。

しかしそんな伝統を守ろうとする人物もいる。トラーパニ近郊で活躍するワイン醸造家ジャコモ・アンサルディ氏。彼は、マルサラで生まれ育ち、ワインの勉強を続けてきた。現在は某大手ワイナリーの醸造家をつとめる他、自身のこだわりのブドウ畑とワイナリーも所有する。そのワイナリーの地下にはペルペトゥムのコレクションがあるのだ。古いものでは1950年代から続いているワインもあるとの事。

「このコレクションはね、農家にお願いして買ったものもあるけれど、きちんとこのワインの伝統を継いでくれるなら、、、という事で農家から引き受けたものもあるんだよ。”息子はもう農業を継がないから誰かがワインを管理してくれないと我が家の伝統が途絶える”、ってね。悲しいけれどそれが現実。でも、僕はこのマルサラの伝統をしっかり守っていきたいと思っているんだ。」

ペルペトゥオを保存するため、厚さもしっかり備えた樽を作ったアンサルディ氏。

「この樽なら今から100年以上はしっかり保存できるだろうからね。息子の代まで続くだろう?」

両サイドには合計30個以上の樽が並ぶ。こんなにペルペトゥオ一同に見れるのはこのカンティーナだけであろう。一つ一つが違う農家から引き継いだものだ。一つ一つの樽に家族の伝統があり、彼らのためにもそれをしっかりと引き継いでいく必要があるのだ、とアンサルディ氏は語る。

私はこの貴重なペルペトゥオを時折試飲する機会に恵まれる。

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琥珀色をした数十年続いているこのワイン、香りを嗅ぐとなんともいえない芳醇な香りで満たされる。口に含むと、非常にさらっとしているのに飲み干した後も香りはずっと続く、、、なんとも言えず後を引くワインだ。アルコール度数は18~19%と非常に高い。アルコールは加えられていないのに、こまで度数が上がるのは、この地区で作られるブドウだから。色々な年代のものを飲ませてもらったが、やはり醗酵具合が樽に寄って異なる事はすぐに分かる。一番古いもので約70年ほど前のもの。それは、一言では、いや言葉では表現できないような始めて味わったものであった。

かつては結婚式や出産祝いなどのお祝い事に振舞われていたというペルペトゥオ。家族の歴史を見守ってきたといっても過言ではないであろう。時代の流れとともに伝統が失われていく事は悲しいことだが、その反面、それを守ろうとする人がいるという事は喜ばしき事。このペルペトゥオコレクションは代々継がれて行く事を心から祈る。
# by lacucinasiciliana | 2012-10-26 19:46 | シチリアワイン

シチリアの畑 @ 秋

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猛暑がが続いた2012年のシチリア。

9月にチョロリと雨が降ったものの、今の今までまとまった雨は降っていない。しかし、夏が暑かった(=暑過ぎた)せいか、植物達も相当お疲れだったようで。雨が少し降って、気温が下がってきた今、なすやピーマンが狂ったように実を付けている。このナス、巨大になる品種ではあるけれど、この時期に育つものはそこまで大きく育たない。あまりに美味しそうだったので、私もいくつか収穫してきた。

さて、こちらはカルチョーフィ(アーティチョーク)。

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一度株を植えると毎年同じ場所に生えてくる。夏の間は土を休ませるためにカルチョーフィが生えてくる場所には何も植えない。このカルチョーフィ、蕾が付き始めるのは年を越して2月頃。(ちなみにカルチョーフィの食用部分は実ではなく”蕾”。)まだまだ先は長い。

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フィノッキオも苗を植えた。

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これは「ブロッコロ」とシチリア方言では呼ばれるカリフラワー。黄緑をしたブロッコリーとカリフラワーの中間みたいなものだが、正確にはカリフラワーだ。これが非常に紛らわしい方言なのだ。

こんな冬野菜を畑で見かけるようになると、いくら日中まだまだ暑いシチリアでも、

「あ~、冬に一歩一歩近づいているのだな~。」

と感じさせてくれる。

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ジャガイモは初夏と冬の年に2回収穫。

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ネギもジャガイモ同様、初夏と冬の2回の収穫なのだが、初夏は球形、冬は細長いネギ。出来るネギの形が違うのも面白い。もちろん同じ品種を植えているのだが。

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今が食べ頃のちょっと先がピンクっぽいサラダ菜。ほろ苦さと甘さが共存している私の好きなタイプであるが、なぜかドミンゴ家ではあまり人気がない。

畑を見ながら、

「今年は野菜が高くってね。去年の1,5倍くらいするんだよ。」

とぼやいたら、

「今の季節は野草がたっくさん生えているよ。八百屋に買いに行くくらいなら、ここに収穫にきてたっぷり持って帰れ。」

春と秋はシチリアでは野草の季節。食べれる野草がそこら中に生えている。そして畑にはそろそろ、ほうれん草やチコリアといった栽培した葉野菜もたくさん収穫できる頃。

今週末はパパと一緒に野草狩りに行ってこよう。
# by lacucinasiciliana | 2012-10-10 16:52 | シチリアの畑から

パパのパパが植えた25本のオリーブの木

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100本を越えるオリーブの木を所有するドミンゴ家。そのうちの25本を、C氏と私で今年から譲り受ける事となった。

パパが生まれ育った場所Piano Neve(ピアノ ネーヴェ)は小高い丘の上にある農業地帯。標高が少し高い分、夜は涼しい風が吹き、冬には雨も降る。(トラーパニは全体的に雨不足)オリーブやぶどうの栽培に適した土地。

数ヘクタールある土地には、3つのゾーンに分かれてオリーブの木が植わっている。私達が譲り受けたのは、パパのパパ(つまりC氏のおじいちゃん)が植えたという25本のオリーブの木。

「ここはね、まだボクが子供の頃にボクのお父さんが接木をして植えていたのを、よく覚えているんだよ」

樹齢70年前後のオリーブの木達だが、まだまだ現役。去年、ここの畑で収穫したオリーブからはほのかに青りんごの香りのするオリーブオイルが出来た。

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シチリアに来てから8年、積極的に生産者を訪問し、生産者だけではなく地元の人達のオリーブ畑や作り方も観察してきた。自然を相手にする農業は、毎年毎年の天候に大きく左右される。そこに確実なマニュアルなどは存在しない。

毎年ドミンゴ家のオリーブ収穫には参加してきたが、今年は年初めから月に数回、オリーブ畑を見に行き、時には耕し手入れをしてきた。

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畑には宝石のようなオリーブの実が付いている。

「自分達の木」になってから初めての収穫。秋の大イベントがそろそろやってくる。
# by lacucinasiciliana | 2012-10-09 16:38 | オリーブオイルのお話